▶手子神社と親子の狛犬

金沢文庫から宮川を遡って歩くと大きなケヤキの木の横の小泉(こずみ)というところに手子神社(てこじんじゃ)があります。1478(文明10)年に釜利谷の領主であった伊丹左京亮(いたみさきょうのすけ)が創建したと伝えられています。社殿の彫刻も見事です。(7月15日 廣瀬)
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境内には「竹生島弁財天」が祀られています。この辺りは、昔は瀬戸の内海と呼ばれた海であり、金沢八景の一つの「小泉の夜雨」が描かれた場所でした。その海を望む神社の東側に弁財天がありました。1940(昭和15)年に海軍の施設を建設するために現在の社殿の左の岩屋に移されたようです。弁財天というと、琵琶湖の宝厳寺、江ノ島の江島神社、広島の厳島神社という湖や海の近くの神社が有名ですが、埋め立てられる前は、ここも同じような立地条件だったと考えられます。

洞窟の中には、宇賀神(うがじん)が祀られています。宇賀神は人間に福徳をもたらす福の神たちの総称で、宝冠の中に白い蛇があったことから白蛇の姿をしているそうです。卵のお供えがあるのはそのためです。

富士塚を模した岩場の上に一対の狛犬が祀られています。昔は富士信仰が盛んで富士山を模した小山が神社に作られていました。品川神社や深川不動堂の富士塚は有名ですが、大道にも、「お富士さん」と呼ばれていた富士塚が戦前までありました。獅子は生まれたばかりの子を深い谷に落とし、這い上がってきた生命力の高い子どもだけを育てるという言い伝えの「獅子の子落とし」に倣った珍しい狛犬をそこに置いたものです。

石碑には、1867(慶応3)年に、赤井村10名、坂本村7名の世話人たちが建立したと彫られています。この辺りに多い日高さん、石井さん、平野さん、黒川さんなどの名前を確認することができます。街をまもる親子狛犬として、今でも地域の人たちに大切に守られています。あまり知られていませんが、見どころがたくさんある手子神社にお参りされてはいかがでしょうか。

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