▶六浦西地区 2022年度 第72回 社明大会の報告

演題「サイバー社会をどう生きるか」〜子どもたちをネット犯罪から守るために〜
● 講師:神奈川県警察本部生活安全部サイバー犯罪捜査課
     情報セキュリティアドバイザー 夘野 智喜(うの ともよし)様
● 日時:2022年9月3日(土)  13:30〜15:30
● 会場:六浦地区センター 3階 多目的室
● 主催: 六浦西地区社会福祉協議会(後援:六浦西地区町内会連合会)
● 参加:45名 学校関係者、PTA、自治会町内会会長、福祉関係団体代表、金沢区支援チーム、 更生保護関連代表
● 司会:六浦西地区社会福祉協議会 事務局長 三瓶かおり
● 記録:六浦西地区担当 保護司 廣瀬隆夫

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【第72回 社明大会のレジメ】

【第一部 講演「サイバー社会をどう生きるか」】

【概要】
インターネットは、不用意に情報を発信することで相手を傷つけたり、嫌な思いをさせてしまうことがあります。また、悪意を持った人に誘導されて犯罪に巻き込まれることがあります。情報の発信、受信の両方の注意が必要です。

インターネットを安全に使うためには、コンピュータやネットの知識も必要ですが、普通に社会生活を営んでいくための一般常識が重要です。そのような知識が乏しい小中学生が事故に巻き込まれないようにするためには、保護者が見守っていく必要があります。

インターネットは道具です。何のためにインターネットを使うのかが重要です。世界が平和になるため、人が幸福になるためにインターネットを使って安全で明るい社会を実現していきたいものです。(廣瀬)

1)子どものインターネット利用にかかわる問題点
■ 子どものインターネット利用のリスク要因
■ インターネットのメディア特性
■ 機械の先には「人」がいる
■ スマートフォンやインターネット利用の問題点
■ ネットでの誹謗中傷
■ インターネットを通じた出会い
2)SNSを利用した人権侵害について
■ SNS等での誹謗中傷
■ SNS等で誹謗中傷されたら… 
■ 悪ふざけなどの不適切な投稿
3)大人が子どもたちのためにできること
■ 保護者による「ペアレンタル・コントロール(見守り、管理する)」の実施
■ 「使い方」を教えるのではなく「正しく使う」心を育む
■ 手本になれる大学生や中高生のサイバー防犯ボランティア
■ サイバー社会で必要な3つの力「判断力」「自制力」「責任力」
■ 「使いこなす」とは?
■ インターネットを使う時に大切なこと

【第二部 スマホ利用状況のアンケートと生徒が作ったビデオの紹介】
■ <スマホの使い方に関するアンケートの紹介>地域の小中学校
■ <「スマホ5か条」大道中学校生徒作成ビデオ上映>

【第三部 感想と意見交換会】
■ 参加者の感想と講演者との意見交換

【来場者アンケートからの抜粋】
■ 参加された皆様からのご意見

【参考資料】
■ サイバーセキュリティ対策の三原則
■ サイバーセキュリティ関連の用語の説明

※ 講演内容をお読みになる前に文末の用語の説明をお読みください。

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(司会)これから2022年度、六浦西地区 社明大会を開催いたします。社明大会は、法務省が全国的に進めている社会を明るくする運動の一環として実施しているものです。社会を明るくする運動は1951(昭和26)年から始まり、今年で72回目となります。私は、本日の司会を担当させていただきます六浦西地区社会福祉協議会の三瓶と申します。それでは、開会に先立ちまして六浦西地区社会福祉協議会 会長の相川元治からご挨拶を申し上げます。

【開会のご挨拶】六浦西地区社会福祉協議会 会長 相川元治

本日は、お忙しい中、六浦西地区の社明大会にご参加いただきありがとうございます。お手元の資料にもありますように「サイバー社会をどう生きるか」という内容でお話をお伺いします。よろしくお願いいたします。

タイトルにある「サイバー社会」という言葉は、日頃あまり使いませんので意味を調べてみました。「サイバー空間の中に人々の活動の場が形成され、利用者の机上での簡単な操作で情報の収集やメッセージの発信ができる」ということでした。サイバーはパソコンやインターネットで作られた世界のことです。

このようなすばらしい革新的な技術ですが、その技術に人間が簡単に対応できないこともあるのではないか、と考えています。高齢になりますと、パソコンのディスプレイ上の情報を頭にインプットすることが難しくなってくると感じます。私も紙にプリントアウトしたものの方が確実に頭に入ります。最近の新聞に出ていましたが若い人でもそのような傾向があるようです。これはどうも、透過光(ディスプレイ)と反射光(紙)の脳へのインプットの違いに起因しているという説があるようです。

頭にインプットしにくいディスプレイ上の情報で安易に投稿することが、後から大きな問題になるのではないかと勝手に想像しています。本日は、「如何にして子どもたちをサイバー犯罪から守って行くか」というお話をお聴きして、その後の討論会で皆様からのご意見をいただき、みなさんと一緒に考えていきたいと思っています。それでは、よろしくお願いいたします。

(司会)相川会長、ありがとうございました。続きまして、ご来賓の皆様のご紹介をさせていただきます。お名前をお呼びしますので、その場でご起立をお願いします。

<ご来賓のご紹介>
ご来賓の皆様、ありがとうございました。

それでは、講演に移らせていただきます。本日は、サイバー社会をどう生きるか、子どもたちをネット犯罪から守るために、というテーマで、神奈川県警察本部生活安全部サイバー犯罪捜査課 情報セキュリティアドバイザーの夘野 智喜様にご講演をしていただきます。

講師の夘野様は、︎民間企業のネットワーク︎セキュリティ︎のシステムエンジニアを経て、︎現在は、︎子どもたちがサイバー犯罪やネットワーク上のトラブルに巻き込まれることを防ぐために情報セキュリティアドバイザーとして、学校関係者や生徒を対象としてサイバー教室の講師などの活動をされています。また、サイバー防犯ボランティアとして活動する県内の中高生、大学生などの活動支援をされています。それでは、夘野様、よろしくお願いいたします。

【第一部 講演「サイバー社会をどう生きるか」

ただ今、ご紹介いただきました神奈川県警察で情報セキュリティアドバイザーをしています夘野と申します。本日は、サイバー犯罪から子どもたちを守るために我々大人がどのようなことができるかを皆さんと考えていきたいと思います。大きく分けて3つお話します。1つ目は、子どものインターネット、スマートフォン利用にかかわる問題点について、2つ目は、SNSを通じた人権侵害について、最後に子どもたちをサイバー犯罪から守るために我々大人ができることについてお話ししたいと思います。


1)子どものインターネット利用にかかわる問題点
それでは1つ目のテーマである「子どものインターネット、スマートフォン利用にかかわる問題点」についてお話しします。子どもたちがスマートフォンなどからインターネットを利用すること自体は決して悪いことではありません。しかし、利用することによって、犯罪やトラブルに巻き込まれるリスクが生じてしまいます。はじめに、子どもたちのインターネット利用時に犯罪やトラブルなどに巻き込まれるリスクを生じさせる要因を整理しておきたいと思います。主なリスク要因として3つ紹介します。

■ 子どものインターネット利用のリスク要因

1つ目は利用環境にかかわる要因です。スマートフォンや携帯型ゲーム機等、子どもたちが使っているネット端末の多くは保護者がいないところでも使えるため、保護者が見守れない、注意できない状況下で子どもたちが利用することとなり、そうした利用環境が犯罪やトラブルに巻き込まれるリスク要因になっています。

2つ目はメディアリテラシーにかかわる要因です。インターネットはテレビ、ラジオ、新聞等と同様なメディア(情報媒体)であり、それらを流れる情報をうまく咀嚼して活用する能力、いわゆるメディアリテラシーが必要となりますが、子どもたちはそうした能力がまだまだ十分には備わっていないため、ネットの情報をそのまま鵜呑みにしてしまい騙されたり、トラブルになる事があります。逆にインターネットというメディアは誰でも情報を容易に発信ができるため、発信者としての責任が生じるのですが、子どもたちの多くがその自覚がない状態で使っていることが、トラブルなどの要因となっています。

3つ目は社会的な能力不足による要因です。インターネットの社会は大人も子どもも関係なく対等な社会です。逆に言えば子どもだからと言って許されることはありません。そのようなインターネットの社会に人間性、社会性、コミュニケーション能力などの社会的能力が不足している状態で子どもたちが入っていくことがトラブルなどの要因となっています。

■ インターネットのメディア特性
ここで、メディアとしてのインターネットについてもう少し考えてみたいと思います。テレビ、ラジオ、新聞といった従来からあるメディアは、基本的に情報を発信するテレビ局、ラジオ局、新聞社が責任を持って発信しており、情報を受信する我々には責任が生じるものではありません。逆に受信する我々にはチャンネルを選ぶ、購読する新聞を選ぶといった事しかできません。

一方で、インターネットというメディアは、受信者(利用者)が主体的に情報を選んで受けるため、情報の選択を誤った場合は、受信者の自己責任です。例えば、皆さんが何か欲しい情報があった場合、インターネットで検索すると思いますが、検索した結果、欲しい情報が出てこなかった場合、それはインターネットの責任ではなく自分の責任になります。更に、見たい情報が出てこないだけではなく、見たくもない情報、例えばグロテスクな写真や動画を見てしまうこともありますが、それは誰の責任になるのでしょうか。それはインターネットの責任ではなく自己責任になります。

また、インターネットは従来のメディアと異なり、誰もが自由に情報発信ができるため、発信者としての責任が生じます。特に今では、スマートフォンを使って動画投稿サイトを通じて簡単に動画を配信できるため、テレビ局と対等のことが子どもたちにも簡単にできてしまいます。テレビ局やラジオ局は総務省から放送免許を取得しなければ放送できませんが、子どもたちは保護者からスマートフォンを買ってもらうだけでテレビ局と同じことができてしまいます。

インターネットは誰もがテレビ局やラジオ局と同様に情報発信ができメディアであるため、情報発信するにあたってはテレビ局やラジオ局と同様な発信者としての責任が生じているはずです。保護者の方が子どもたちにスマートフォンなどのインターネット端末を使わせる時には、「あなたはテレビ局、ラジオ局と同じことができるから、テレビ局、ラジオ局と同じ責任を持って使いなさい」と伝えるべきではないでしょうか。

しかし、そのような指導を行っている方はあまりいないのではないと思います。そのため、多くの子どもたちが発信者としての責任を意識せず、中には無責任な情報発信をしてしまうことがあり、その最たるものとしてネットいじめやSNSでの誹謗中傷などがあげられます。ネット上で他人のことを考えず、無責任なことを書き、保護者のみなさんが、「何かあったら連絡が取りあえる」等、子どもたちの安全・安心のために持たせたスマートフォンなどを、残念ながら「人を傷つける道具」にしてしまうことがあります。

人を傷つけるという意味では、スマートフォンは刃物とかわりません。身体に傷をつけるか、心を傷つけるかの違いだけです。おそらく保護者の方は、お子さんに刃物を使わせるのであれば、自分が怪我をしないように注意すると共に、他人を傷つけないよう「人に刃先を向けてはいけない」などと注意をすると思います。同様に、保護者の方はスマートフォンなどのインターネット端末をお子さんに使わせるのであれば「人を傷つけるような使い方はしてはいけない」ということを、しっかり伝えてから使わせる必要があると思います。

■ 機械の先には「人」がいる
ところで、我々はパソコンやスマートフォンなどといった機械を使ってインターネットを利用しているため「機械を相手にしている」ように感じてしまうことがあります。しかし、機械を相手にしているのではなく、機械を通じて様々な人たちとやり取りしているのであり、現実の世界の人とのやり取りと変わりません。「機械の先には人がいる」という認識が必要です。インターネットで必要となる能力は、いわゆる「ITリテラシー」と言われる「道具を使う能力」ではなく、人間性や社会性、コミュニケーション能力といった、言うなれば「社会的なリテラシー」の方が大切なのです。

しかし、子どもたちはまだまだ人間として未熟で成長過程ですので、社会的リテラシーが十分に備わっていない状態であり、そのままインターネットの社会に入っていくことになれば、犯罪やトラブルに巻き込まれることがあるのです。インターネットの世界は、大人も子どもも関係なく対等な世界です。それは「子どもだから」は通用しないということでもあります。子どもたちに、インターネットが、そのような社会であることをしっかり理解をして使ってもらう必要があります。

■ スマートフォンやインターネット利用の問題点
次に子どもたちがスマートフォンなどからインターネットを使っている際に起こりがちな問題について整理してみたいと思います。大きく3つに分けて紹介します。


1つ目はコミュニケーション上の問題です。社会性、人間性、コミュニケーション能力の不足からトラブルやネットいじめ、SNSでの誹謗中傷などに発展してしまうことがあります。

2つ目は見知らぬ者と接触して犯罪被害に遭ってしまう問題です。インターネットには、見知らぬ者と知り合い現実社会で接触し犯罪等に巻き込まれる「コンタクトリスク」などと呼ばれるものがあります。子どもたちの多くが携帯電話を持つようになった2000年(平成12年)頃、子どもたちが出会い系サイトを通じて知り合った者と現実社会で接触し犯罪被害に遭う事案が多くあり、社会問題になっていました。現在では、そのような話はあまり聞かなくなったと思います。それは出会い系サイト規制法で18歳未満が出会い系サイトを使えなくなったこともありますが、そもそも子どもたちが出会い系サイトを使わなくなったからとも考えられます。

しかし、子どもたちにかかわるインターネットの「コンタクトリスク」が無くなったかということではありません。現在ではSNSを通じて知り合った者と現実社会で接触し犯罪被害に遭う事案が多発していて、その被害児童数は、かつての出会い系サイトをきっかけとした被害児童数を遥かに超えています。出会い系サイトをきっかけとした犯罪被害を防ぐためには、子どもたちに対し「出会い系サイトは使わない」よう指導することができましたが、SNSは子どもたちが家族や友達との連絡手段として使っている道具であるため「使わないようにする」という指導ができないという問題もあります。

3つ目は情報発信に関わる問題です。インターネットは誰もが自由に情報発信ができるため、不適切な情報発信をしてしまい、いわゆる「炎上」につながってしまうことがあります。また、写真や動画の不適切な公開、不用意な個人情報やプライバシーの公開等からトラブルなどに発展してしまうこともあります。そうしたトラブルでは、自ら個人情報等を公開してしまうというものだけではなく、友達の個人情報等を勝手に公開してしまい、ある意味、加害者になってしまうケースもあり、人権侵害事案に発展することも考えられます。

次に具体的な事例を紹介していきます。

■ ネットでの誹謗中傷
18歳の少年が、1年以上にわたりSNSに男子高校生を中傷する書き込みをし、これに悩んだ男子高校生が自殺し、書き込んだ少年が名誉棄損で検挙されています。SNS等のネットへの書き込みは、相手のことを考えず好き勝手に誹謗中傷するような内容を書くことができますが、そのような書き込みは、この事例のように自ら命を絶ってしまうほど、書かれた人の心を深く傷つけることもあります。

また、ネットいじめ、ネットでの誹謗中傷は、現実のいじめなどと大きく異なる点があります。現実のいじめなど、言葉で言われた悪口は時間が経てば心の傷が癒えることもありますが、ネットでは書かれた悪口は何度でも見ることができてしまうため、その度に同じ痛みを受けることになり、時間が立ってもって傷が癒えることはありません。

学校での現実のいじめならば、極端な話、学校に行かない、転校するといった対応も考えられますが、ネットいじめの場合は、例え学校に行かなくても世界中どこにいても書き込みを見ることができてしまうため逃げることはできません。このような点が、ネットいじめと現実のいじめの違いであり、ネットいじめの深刻なところになります。

なお、先の事例で少年が逮捕されたのは、ネットいじめ、誹謗中傷を受けて高校生が自殺したからではなく、SNSへ書き込んだ内容が名誉毀損だったということが重要です。ネットいじめ、誹謗中傷を受けた人が自殺に至らなくても、書き込み内容が名誉棄損といった犯罪となる場合があることも認識しておく必要があります。

■インターネットを通じた出会い
次の事例として、インターネット、SNS、オンラインゲームでの出会いに関する動画がありますのでご覧ください。

○ 気を付けて!ネットだけの知り合い、ホントにだいじょうぶ?(政府インターネットテレビ)
  https://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg24893.html

インターネット、SNSは、犯罪者と被害者を結びつけるコンタクトリスクがあり、それは命にかかわるリスクであることを理解して使う必要があります。多くの子どもたちは小学生のころから「インターネットで知り合った知らない者に遭うことは危ないこと」と教わってきており、そのことはしっかり理解していると思います。

しかし、子どもたちがインターネット、SNSを通じて知り合った者から犯罪被害に遭ってしまったという事案は後を絶ちません。それは、今の子どもたちはSNS、オンラインゲームで知り合い仲良くなった者は「友達」であり、友達に会うことには危機感を持たないと考えるためです。

最近では、こうした犯罪の加害者の多くが、SNS等でのやり取りを通じて徐々に子どもに信頼を植え付ける「グルーミング」を行っていることが知られています。「グルーミング」とは、元々、ペットなどの動物を手懐ける行為のことですが、子どもたちを狙う犯罪者たちは、「グルーミング」により、ターゲットの子どもたちにとってクラスの友達や家族よりも信頼できる「友達」といった関係を築いてしまいます。

そのような関係性を築き、実社会で会う約束をしたり、個人情報を聞き出して、その情報を公開するなどと脅した上で裸の写真を送らせるなどしてきます。子どもたちには、そうした手口で接近してくる犯罪者がいることを認識してもらい、現実社会の友達とネット社会の友達を区別するなど、友達との適切な距離感を持てるようになってもらう必要があります。

また、保護者の方には、お子さんがSNS、オンラインゲームなどで、どのような者とどのようなやり取りをしているのか関心を持ち、しっかり見守り、ネットの友達から「裸の写真を送れ」などと言われた時に、写真を送る前に相談できるような、何でも話せる親子関係をしっかり築いていただきたいと思います。

2)SNSを利用した人権侵害について
2つ目のテーマとして「SNSを利用した人権侵害について」お話します。

■ SNS等での誹謗中傷
近年、出演したテレビ番組での言動についてSNSで誹謗中傷されてしまった女子プロレスラーの方が、その書き込みを苦に自殺してしまった事案などから、SNS等での誹謗中傷が社会的な問題となってきています。インターネット、SNS等で誹謗中傷することは簡単にできてしまいますが、思った以上に相手を深く傷つけたり、多くの人に迷惑をかけてしまうこともあります。また、内容によっては名誉毀損や侮辱罪といった犯罪になる可能性もあります。

最近は、芸能人や有名人がSNS等で誹謗中傷された際に民事訴訟を起こすケースも増えてきています。以前は、芸能人などが誹謗中傷されることについては「有名税」などと言った風潮がありましたが、最近では泣き寝入りせず訴訟を起こす芸能人が増えています。名誉棄損や侮辱罪といった犯罪とならなくても民事訴訟によって慰謝料を請求されるとこともあるという認識を持っておく必要があります。

中には、自分の正義感から過激な書き込みをしてしまう人がいますが、例え正義感であっても誹謗中傷は許されるものではありません。また、他の人を誹謗中傷する書き込みに同意して再投稿、拡散させることで被害を拡大しまうこともあります。このようにSNS等では、悪意を持って行うだけではなく、一時的な感情でいら立ちを覚えたり、自分の中の正義感が高じて過激な投稿をして個人攻撃してしまうことがあります。「リツイート」、「リポスト」などと言われる再投稿も含め、加害行為をしないためには次の3つのことに注意する必要があります。


1つ目は、「誹謗中傷と批判意見は違う」ことに注意することです。誹謗中傷をする者の中には、「批判しているだけ」、「意見を言っているだけ」などと思っている者もいます。しかし、相手の人格を否定するような内容は批判や意見ではなく誹謗中傷であることは、十分認識しておく必要があります。

2つ目は、「匿名性による気のゆるみ」に注意することです。SNSなどは、スマートフォンなどの機械を通じて利用しているため相手に自分の姿が見えず、自分がやったとわからないだろうと思って匿名で投稿できると考えてしまうことがあります。インターネットは匿名性が高いと言われていますが、完全な匿名な社会ではなく、技術的に発信者を特定できる仕組みがあるため、発信者が特定されて刑事上、民事上の責任を問われる可能性があるということも認識しておく必要があります。

3つ目は「感情に流されない」ように注意することです。有名人などの言動を「許せない」などと感じ、他の利用者がその言動を非難する投稿をしているのを見て、その時の感情や勢い、雰囲気に流されて投稿したり、そうした他の利用者の投稿を拡散させてしまうと取り返しのつかないことになることがあります。カッとなっても立ち止まって、本当に投稿すべきなのか、投稿したことに責任が負えるかを、冷静になってよく考える必要があります。

■ SNS等で誹謗中傷されたら… 
逆に誹謗中傷、ネットいじめにあってしまった場合の対処方法を紹介します。ネットでの誹謗中傷は、現実の誹謗中傷とは異なり、投稿された内容をパソコンやスマホで何度も見てしまうと、その度に辛い思いをしてしまうということになるため、「見えなくする」ことが必要です。また、誹謗中傷する投稿が拡散される恐れもあるため、被害を少なくするためにも、一刻も早く「見えなくする」必要があります。

「見えなくする」方法としては、多くのSNSで利用できる「ミュート」や「ブロック」などの機能を有効に使うことが考えられます。また、多くのSNSでは利用規約などで誹謗中傷等を禁止しているため、SNS事業者に対し利用規約等に基づく削除依頼を行うことを推奨します。「ブロック」しても新たなアカウントを作られて誹謗中傷される、削除してもまた書き込まれるということが繰り返されて誹謗中傷が拡散される前に、SNS事業者に削除依頼を行うべきだと思います。

誹謗中傷を行った者の処罰を求める場合には、住所地を管轄する警察署にご相談いただくことになりますが、削除依頼の方法がわからない、今後どうすれよいかわからないなどといった場合であれば、インターネット事業者等から成る「セーファーインターネット協会」の「誹謗中傷ホットライン」を利用すると、インターネットの専門家からアドバイスがもらえると思いますのでご検討ください。

 ○ 一般社団法人セーファーインターネット協会
    https://www.saferinternet.or.jp/


■ 悪ふざけなどの不適切な投稿
次に情報発信にかかわる問題として悪ふざけなどの不適切な投稿事例、いわゆる炎上事案についての事例を紹介します。高校生たちが学校帰りに制服のまま線路内に立ちリ、大はしゃぎする写真を撮り、仲間内に見せようとSNSにアップしたところ批判され、更には学校名や名前が特定され、学校にも抗議が殺到しました。その後、高校生たちは鉄道営業法違反等の罪で家庭裁判所に送致されました。

この事例のような、仲間内に見せるつもりで公開して大炎上する不適切な写真や動画、度を越した悪ふざけ、悪意のある投稿などによるトラブルをなくすために、子どもたちに「インターネット、SNSは誰が見るかわからないから、悪ふざけをした写真や動画を投稿すると炎上するのでやめましょう」といった指導をなされている方もいるかと思います。

それは間違いではありませんが、根本的な解決になるかどうかは疑問です。いわゆる、炎上事案はネットに載せたことにも問題がありますが、一番の問題は、それをやってしまった行為自体だからです。バイト先で食材の冷蔵庫に入れば、写真や動画を撮ってSNSに投稿しなくても、店長に見つかれば解雇されます。また、イタズラ、ウケ狙い、悪ふざけであっても、度が過ぎれば大きな問題になり、場合によっては犯罪になってしまうこともあります。

それだけではなく、「デジタルタトゥー」と称されるほど、ネットに刻まれた情報は半永久的に残ってしまい、その後の就職活動等に影響が出てしまうこともあります。未来の自分を苦しめないために、決して間違った使い方をしないよう、子どもたちに十分説明して考えてもらう必要があります。

3)大人が子どもたちのためにできること

それでは最後のテーマとして、子どもたちが安全で安心してインターネットやSNSを利用しできるよう「大人が子どもたちのためにできること」についてお話します。

■ 保護者による「ペアレンタル・コントロール(見守り、管理する)」の実施
まず、保護者の方々には、「ペアレンタル・コントロール(parental controls)」をお願いします。「ペアレンタル・コントロール」というと、何か難しい技術的なことと思われる方もいるかもしれませんが、これは「子どもたちのインターネット、スマートフォンの使い方を保護者が見守り、管理する」ということです。


具体的には、前段階として、新たな機器を子どもに与える際には、その機器のインターネット機能の有無などを確認し、利用させるかどうかを十分に吟味する、その上で使わせるのであれば、第一段階として、インターネットやSNSという、言わば「子どものネットの遊び場」の危険個所、潜んでいるリスクを親子でしっかり確認する、ということが重要です。

第二段階として、確認した危険性、リスクを回避するためにどのように使うべきか、やってはいけないことはどのようなことかを約束、ルールとして明確にしておく必要があります。例としては、お子さんがインターネットに溢れている有害な情報にアクセスして悪影響を受けないように、「有害な情報にはアクセスしない」というルールを作ることが考えられます。しかし、興味本位や好奇心でアクセスしてしまう場合には、「フィルタリング」という機能制限を設けることもあります。しかし、フィルタリングなどの機能制限はペアレンタル・コントロールを行うための手段でしかないということも保護者の方に理解していただく必要があります。ルール作りのヒント、また、ルールを決める際には、「使い方を制限する」という視点ではなく、「この道具は、この様に使って欲しい」、逆に「このような使い方はして欲しくない」という使い方の指針を示した上で、子どもたち自身に「どのように使うのがよいか」を考えてもらい、親子で約束、ルールを決め、ルールだけで不十分な場合は機能制限をしていただくとよいと思います。

第三段階としては、約束やルールを守って使っているかどうか、「監視」をするのではなく「関心」を持って見守る、特に使っている中で困っていること、悩んでいることがないかといったことに注意を払う。困っていること、悩んでいることの最たるものが「ネットいじめ」であり、ネットで知り合った者から裸の写真を送るように求められることなどです。取り返しのつかない事態になる前に、見守り気付いてあげる必要があります。

ルール作りのヒント


第四段階として、見守っていく中で約束やルールが守られていないなどの問題を見つけた時には「駄目じゃない!」と叱るのではなく、なぜ、守れなかったのか、今後、どうするのかについて親子で話し合い、どうするべきなのか指導する、それを踏まえ第二段階に戻り、ルールでは難しいということであれば機能制限を活用する、しっかり使えているのであれば機能制限を緩くするといったことを行います。また、ルールが厳しすぎて守れなくて実効性がないのであれば、逆にルールを緩めることも考えなければなりません。

こうした一連の流れを繰り返すことが「ペアレンタル・コントロール」の考え方になります。このような話を聞くと、中には「そんな大変なことはできるわけない」などと思われる保護者の方もいるかもしれませんが、お子さんを犯罪やトラブルから守るために必要なことだと思います。「ペアレンタル・コントロール」を実施することは、お子さんを守るという意味だけではなく、お子さんが大人になった時に困らないように「セルフ・コントロール」できるように育てていくことであるということも理解していただくことが大切です。

■ 「使い方」を教えるのではなく「正しく使う」心を育む
次に子どもたちへの指導についてです。子どもたちに指導するに当たっては、「使い方」や「危険性」を教えることに終始するのではなく、現実社会と同様に「やって良いこと、悪いこと」を考え、「悪いことをしない」という「規範意識」を育む、併せてネット利用者としての自覚を持って、ネット利用者として備えるべき「サイバー社会で必要な3つの力」を養っていくことが大切です。

子どもたちの「ITリテラシー」を高めることは必要ですが、「ITリテラシー」は言わばIT機器を扱う能力、「道具の使い方」ですので、むしろ、メディアを扱うために必要な「メディアリテラシー」や他の人々との関わり合いに必要な人間性、社会性、コミュニケーション能力、言わば「社会的なリテラシー」を備えることが重要です。

更に、インターネットを使っていれば大人も子どもも関係なくサイバー攻撃を受ける、ランサムウエアなどのウイルスに感染するなどにより、スマートフォンが使えなくなったり、情報漏えいなどの被害に遭う恐れがあるため、子どもたちにもサイバーセキュリティーに関する基礎的な知識もしっかり身につけることも必要となってきています。但し、これらの指導にあたっては、「我々大人が手本を示すことができるか」という事が課題となります。現実の社会の問題であれば、大人が子どもに手本を示す事ができるかと思います。

一方、インターネット、スマートフォンに関することについては、「子どもたちの方が詳しい」と感じている方もいらっしゃるかと思いますし、中には「子どもの方が詳しいから使い方は子どもに任せています。」などと言われる保護者の方もいらっしゃいますが、我々大人もインターネットやスマートフォンについて学び、子どもたちに手本を示せるようになることが必要だと思います。しかし、IT関係の仕事をしている方であればよいのですが、一律に保護者の方や周りの大人が子どもたちに手本を示せるようになることは難しいかもしれません。

そこで、「子どもたちの手本となれる大学生や中高生に協力してもらう」ということが考えられます。

■ 手本になれる大学生や中高生のサイバー防犯ボランティア
現在、安全・安心で責任あるサイバー市民社会の実現に向け、多くの方々がサイバー防犯ボランティア活動に取り組んでくださっています。そのような方々の中には社会人だけでなく、大学生や中高生のボランティアもおり、サイバー教室の講師を務める教育活動等で活躍しています。

大学生や中高生のサイバー防犯ボランティアよるサイバー教室は、年齢が近いという親近感から身近な問題と捉えやすく、子どもたちに正しい使い方の手本を示すことができるため、指導に効果的だと考えらえますし、活動する大学生、中高生自身も子どもたちへの指導のために必要となる知識を身に付ける「学びの場」となっているところもあります。また、これだけ子どもたちが日常的にサイバー空間を利用しているのであれば、子どもたちの学びの場、成長の場、子育ての場としてサイバー空間を活用するということも考えていただきたいと思います。そのようなサイバー空間の活用方法の一つとして、中高生によるサイバー防犯ボランティア活動が県内各地で広まってくれるとよいと思います。

なお、神奈川県内のサイバー防犯ボランティア活動については、県警察ホームページをご覧ください。

 ○ サイバー防犯ボランティア活動について(神奈川県警察)
   https://www.police.pref.kanagawa.jp/mes/mesd7027.htm


■ サイバー社会で必要な3つの力
次に「サイバー社会で必要な3つの力」を紹介します。


1つ目は、インターネットの情報の正否、危険性の有無、行動の善悪を見極める「判断力」
2つ目は、興味本位や好奇心、軽い気持ちで行ったことが思わぬ犯罪やトラブルになることがあるため、誘惑に負けない、周りに流されない「自制力」
3つ目は、インターネット社会は自己責任が原則であるため、自分の行動に責任が取れる「責任力」です。

子どもたちが、普段からインターネット、スマートフォンを使う際に、この「3つの力」を意識してもらい、自分に不足する力があれば「その力を強くしよう」等と考えられるようになるとよいと思います。この「3つの力」はサイバー社会だけではなく、現実の社会でも必要な力ですので、日頃の生活の中でも養っていくよう子どもたちに伝える必要もあります。

■ 「使いこなす」とは?
皆さんは、「子どもたちはインターネットやスマートフォンを使いこなしている」と思いますか。私がボランティアの中高生、大学生の行うサイバー教室に同行した際に子どもたちへこの質問をすると「使いこなしている」と元気よく答える子が2~3人います。しかし、「使いこなすとはどのようなことですか?」と、その子たちに質問すると答えられる子は、ほとんどいません。

私の考える「使いこなす」として、「自分の成長につながること、周りの人のためになること、世の中のためになることができてはじめて使いこなすと言えるのではないか、スマートフォンの操作がテキパキとできる、ゲームのスコアが高いなどという事は、決して使いこなしているとは思えない」と伝えています。

更に、日頃から使っているインターネット、スマートフォンの正しい使い方を考えて小中学生に伝えるというサイバー防犯ボランティア活動をしている中高生、大学生たちが、正に「世の中のためになる使い方」の手本を示してくれていると伝えています。世のため、人のためになる使い方を考え、行動できるよう子どもたちを導くことは、我々大人の責務ではないかと思います。

逆に間違った使い方の事例としは、当県警察で扱った小学3年生がプログラムを勉強して動画投稿サイトを参考に作成したウイルスを保管して提供したという事案が挙げられます。子どもたちは、このようなことを「友達を驚かせよう」「自慢しよう」などといった軽い気持ちで行ってしまうことがあります。それは、我々が子どもの頃に、大きなカブトムシを捕まえた時やプラモデルが上手に作れた時に友達に自慢していたことと変わらないことだと思います。自分で勉強してプログラムを作れるようになることは決して悪いことではなく、むしろ好ましいことですが、1、2年生の段階から、身につけた知識や技術は決して悪いことに使ってはいけないということや、現実社会と併せてサイバー空間の規範意識の醸成をしていただきたいと思います。

■ インターネットを使う時に大切なこと
最後に「インターネットを使う時に大切なことは何か」ということをお伝えしたいと思います。インターネットを使う時には、「使い方」よりも「使い道」が大切です。「どう使うか」ということよりも「何のために使うか」という目的の方が大切です。目的のために最適な道具がインターネットやスマートフォンであれば、それを有効に使うべきですが、他の手段や道具の方が有効であれば、そちらを選択しても良いのです。

災害などでインターネットやスマートフォンが使えない時には、他の手段や道具を活用できる能力は重要です。そんな時に「インターネット、スマートフォンがなければ何もできません」などと平気で言うような残念な大人にならないよう、子どもたちを導いていきたいものです。

私の話は以上です。
ご清聴ありがとうございました。

(司会)夘野さん、ありがとうございました。みなさん、ご質問があるかと思いますが、ディスカッションの前に、この地域の小学校と中学校の子どもたちに実施したアンケートと大道中学校の生徒が作成したビデオをご紹介したいと思います。

【第二部 スマホ利用状況のアンケートと生徒が作ったビデオの紹介】

<スマホの使い方に関するアンケートの紹介>地域の小中学校(大道小学校、朝比奈小学校、六浦南小学校、大道中学校)
先生にお願いしてスマホの使い方のアンケートを取っていただきました。中学生になるとほとんどの生徒がスマホを所有しています。

<「スマホ5か条」大道中学校生徒作成ビデオ上映>
大道中学校の生徒がタブレットを使って自分たちでスマホを正しく使うにはどうしたら良いかというビデオを作りました。その中で、「スマホの5ヶ条」を自分たちでまとめました。
1.家族との時間を大切にする
2.個人情報を守る
3.利用目的によって時間を決める
4.SNSで発信する内容に気をつける
5.危険なサイトにアクセスしない


【第三部 参加者の感想と意見交換】

(司会)夘野さんのお話、地域の小中学校の生徒のアンケート、自主ビデオの上映と盛りだくさんで進めてきましたが、皆さんにお話をしていただいて、子どもたちをネット犯罪から守るためにどうしたらいいのかということについて話し合っていきたいと思います。感想やご意見のある方は挙手をお願いいたします。

・貴重なお話、ありがとうございました。ネットは危険だからと言って闇雲に禁止するのではなく、自分たちで判断してネット社会を生き延びていけるスキルを子どもたちに身につけさせることが重要、というお話が印象に残りました。

・インターネットが出てきて、まだ20年です。これから法整備や安全に使える仕組みを作っていく時期だと思います。大道中学校の生徒たちが、自分たちで安全にスマホを使うためのルールを作ったというビデオが上映されましたがすばらしい活動です。このように、これからネット社会で活躍する中学生が主体となって自主的に活動することは、有意義で大切なことだと思いました。

・ITについて詳しくありませんが、今回のご講演をお聞きして、どこに問題があるかが良く分かりました。ただ、我々の知識が追いついていけないので、その問題を解決するところまで行けないのが歯がゆい所です。自分たちが、もう少しスマホやパソコンを使えるようにならないと、問題解決まで到達できないのではないかと思いました。

・今、パトロールで公園などに行っても子どもがいないのです。子どもたちは、家にこもって仲間どうしでパソコンやスマホをやっているのだと思います。そこで問題が起こってから騒いでも遅いのです。自分の子どもを持っているお父さん、お母さんがやらなければならないこと、もう一歩先に行って私たちのようなおじいちゃん、おばあちゃんが、どこまで子どもたちの世界に入って行けるのか、入り込むには何をしたら良いのか教えてください。
⇒具体的にできることは、子どもたちと一緒に使い方を学んでいくことです。子どもたちの方がスマホに詳しいのなら、おじいちゃん、おばあちゃんが、使い方を子どもたちに聞く、その時、大人として、こういうときはどうするのと言う問いかけをすることで、子どもたちも別のことに気づくという学び合いができるのではないかと思います。人とどのように接するか、どのように人に配慮するかを教えて欲しいと思います。その点については、おじいちゃん、おばあちゃんの方がベテランなので、そこを子どもたちにうまく伝えることができれば良いのではないかと思います。

・技術的に無知なので、ネットやスマホに対する恐れがあって手をこまねいているところがあったのですが、今日、ご講演をお聞きして根本的にはネットやパソコンの技術的な問題ではなくて、親子の信頼関係を育むとか信号無視をしないとか、昔からの子育てをするための躾と同じことが大切だと分かりました。子どもたちの中にある思いやりや正義感などを育んでいくことが、サイバー犯罪から子どもたちを守ることにつながるということが分かりました。

・大人たちに来ている詐欺メールは、子どもたちにも来ているのでしょうか?
⇒詐欺メールは無差別に送られてきますのでインターネットを使っていれば誰にでも来ると思います。子どもたちには、昔の不幸の手紙のようなチェーンメールも来ています。子どもたちは、メールよりもLineなどのSNSを使うことが多いので、そこに来ている可能性があります。詐欺メールは無視するのが一番ですが、巧妙なフィッシングメールなどで、ニセのサイトに誘導されてIDパスワードを盗まれる事案もありますので注意が必要です。

・親が使い方を良く知らないために、子どもたちに教えられないのが問題なのかなと思います。息子が高校生の時に学校の先生にフィルタをかけていただいて事故に遭わずにすみました。親が、フィルタのかけ方などの技術的なことをもっと知る必要があると思いました。サイバー犯罪ボランティアの活動に参加して、同じくらいの年齢のおにいさん、おねえさんに教えてもらうことで身につくのではないかと思いました。このような活動を積極的に取り入れていきたいと思いました。ありがとうございました。

・被害に遭った時にどこに相談したら良いかを教えて下さい。
⇒ワンストップで何でも解決してくれる窓口というのはありません。起きている問題に対してどうしたいかによって相談窓口が変わってきます。犯罪として捜査して欲しいということであれば、警察に相談してください。金銭的な問題であれば消費者相談センターなどです。誹謗中傷でしたら総務省などにも窓口があります。警察は、お住いの警察の住民相談係に相談することができます。困っていることキーにして検索してみると相談窓口がたくさん出てきますので活用してください。

・「社会を明るくする運動」の目的の中に「犯罪や非行をした人が再び犯罪や非行をしないように,その立ち直りを支えること」というものがあります。ご講演の中でもお話がありましたが、ネットに一度書き込まれると中々情報が消えないというデジタルタトゥーのお話がありましたが、犯罪を犯した人の事件がニュースとしてずっと残り続けてしまって、立ち直ろうと思っても就職が出来なくて更生の妨げになっているということがあります。
⇒このような問題は以前からあって、過去に炎上した学生が就職が決まっていたのに落とされたということがありました。今は、企業のほとんどがネットを使っていますので、変な情報が載っていると不利になります。欧州では、「忘れられる権利」というものが法律として認められていて過去に書き込まれた情報を消してもらうことができます。日本では、まだ法律で認められていませんが、民事訴訟を起こしてGoogleなどのサイトから削除してもらったという判例があります。

・大道中学校の生徒が作成した「スマホ5か条」のビデオを見せていただきましたが、小学校も中学校と連携して1年に何度かサイバー犯罪から子どもたちを守るための活動ができたら良いと考えています。

・スマホは生活する上で必要な道具になったと思います。子どもたちと一緒になってゲームなどを通してスマホの使い方を学ぶことができたら良いなと思いました。

・人間としてどうあるべきなのかを子どもたちに伝えていくことが重要だと思いました。面白半分で撮った写真をネットに拡散されて消して欲しいとか、写真の背景から住所が特定されて付きまとわれて困っているなどは、人権擁護の観点から頻繁に受け取る相談ごとです。身近にある問題として捉えて、子どもたちにも危険性を伝えていくべきだと思います。

(司会)たくさんのご意見をいただきありがとうございました。それでは、最後になりましたが、閉会のお言葉を大道中学校校長 勝 俊一様、お願いいたします。

【閉会の言葉】横浜市立大道中学校 校長 勝 俊一様

私たち人類が、進化して豊かな生活を手に入れられたのは、言語の獲得と火の利用だと言われています。火が危険な場合は電気に変換したり、いろいろな代替のやり方を工夫して長い歴史の中で使ってきました。ネットを利用したSNSの仕組みは、それに匹敵する発明ではないかと思っています。人類が誕生して何十万年もかかって獲得した言語や火も使い方と管理の仕方を誤れば、未だに人を傷つけたり大きな被害を与えたりすることがあります。SNSがここまで広がったのは、一説によると東日本大震災の後からと言われています。十数年の歴史しかない仕組みですから、危険性と脆弱性を、まだまだ含んでいるのは当たり前だと思って利用する必要があると感じています。

言語だけが意思を伝達する手段ではありません。海外で知らない国の人と会った時、当然、言葉は通じません。その時は、言葉の代わりに身振り手振りや表情を使ったりして工夫してコミュニケーションをはかります。SNSを使う時にスマホやネットの危険性と脆弱性に注意することも大事ですが、SNSを使うことだけがコミュニケーションの全てではありません。スマホを使って伝えることは、コミュニケーションの手段の中のほんの一部分で、正しいコミュニケーションのとり方は他にもたくさんあるということを子どもたちに教えたいと思っています。このことについては、人生の大先輩のみなさんがいちばん詳しいのではないかと思います。

今の中高生も、あと60年もすれば、かなりの高齢になっていますので「今の若い連中は、機械を使って何かすごいことをやっているけど、楽しくて興味深いことは、その他にもいっぱいあるんだよ」と若い人に偉そうに言っているかもしれません。歴史は繰り返すと言いますが、若い人の活動を高齢の方が客観的に評価する、そういうことではないかと思っています。

横浜市内で起こるトラブルを見ていますと、事故を起こした人は、必ず、こんなことになるとは思わなかった、と言います。リアルの世界だったら範囲も狭いし関わる人も限られていますので、ごめんなさい、ですみますが、ネットでは全く通用せず、いつ収束するか終わりが見えません。「いいね!」が欲しくてフォロワー数をかせぐために、とんでもない映像を発信してしまい頭をかかえるシーンがたくさんあります。

何でそんなことが起こるのか、なぜ冷静になれなかったのかと、ずっと考えていましたが、この講演を拝聴して、これかと思うところがありました。SNSは本来は「ソーシャル・ネットワーク・サービス」ですが笑い話的に「そこらへんの・なかまうちの・さーびす」というお話がありましたがひょっとして、それかもと思いました。夢中でやっているうちに、全世界につながっていることを忘れて仲間うちで楽しんでいると錯覚して知らずに発信してしまうことが原因ではないかと思いました。

この社明大会には学校の職員も参加しています。今日のご講演の内容を、これからの生徒指導に活かしていきたいと思います。本日はありがとうございました。

(司会)勝校長先生、ありがとうございました。それでは、これをもちまして2022年度社明大会を閉会したいと思います。すばらしいご講演をしていただいた夘野さんに、もう一度、盛大な拍手をお願いいたします。お手元のアンケートをお出しになり、忘れ物がないように身の回りの荷物をお確かめの上お帰りください。長時間、本当にお疲れさまでした。

【来場者アンケートからの抜粋】

参加された来場者の方から、子どもたちをネット犯罪から守るためにはどうすれば良いかというご質問に対して、多くの有意義なご意見をいただきましたのでご紹介します。

・ 判断力、自制力、責任力の3つの力が大切。子どもの責任感を育むこと
・ スマホを使っている時は、機械でなく人と接しているという意識を持つことが重要
・ サイバー犯罪の被害者だけでなく加害者にもならないように気を付けたい
・ スマホやインターネットを恐れず知ろうとする姿勢が大切。大人が理解し子どもに説明できるようになること
・ 日常でのコミュニケーションが大切。子どもと話し合う時間を持つ。親子が常に協力して情報を共有する。
・ 子ども自身にネットの「使いみち」を教えるために一緒に考える機会を持つ
・ 常に保護者が子どもと話し合い、日頃の行動を見守り子どもの変化にいち早く気づける感覚をもつ
・ 大道中学校の生徒のビデオが大変良かった。分かりやすい5か条だった。大人にもあてはまる
・ まずは家庭の環境やルール作りに取り組む。親子で約束事を決める
・ 親も使い方を勉強してITについて知る。興味を持って新しい知識や技術を更新していく
・ ルールなどでしばるだけではなく、SNSでもゲームでも子どもと一緒にやってみて話し合って考えてみる
・ 人間としてどうあって欲しいかを伝えて話し合う。スマホを与える前からの人格形成、与える時のきちんとした指導
・ネットは1つの手段。ネット以前に良い悪いの判断がきちんとできるよう話し合いを続けたい
・ネットの良さと危なさを共に伝える指導が必要。ネットはダメだけではない
・ ネットだけでなく、子どもたちが社会での歩み方を教える必要がある
・ 子どもからはネットの技術を学び、子どもには社会的な知識を教える
・ 1人ではなく、いろいろな機関と連携してネットを安全に利用する
・ 大人が見守りが出来るように、大人がITを使いこなすことが出来るようになる講座を希望
・ 少し年上の子たちが実体験など含め話してもらうためにサイバー犯罪ボランティアとの交流が重要

【参考資料】(文責 廣瀬隆夫)

■ サイバーセキュリティ対策の三原則
お使いのパソコンやスマホの情報セキュリティ対策を行って被害に遭わないように注意してください。

・原則1 ソフトウェアの更新
メーカーから提供されるWindowsやスマホ、ブラウザのアップデートなどの修正プログラムを必ず適用してください。
・原則2 ウイルス対策ソフトの導入
パソコンをウイルスに感染させないためにウイルス対策ソフトを導入してください。
・原則3 堅牢なパスワードの設定と管理
英数記号などを含めた10桁以上の堅牢なパスワードにして盗まれないように管理してください。

■ サイバーセキュリティ関連の用語の説明
日常ではあまり使わない言葉が出てきましたので解説を行いました。

・サイバー空間:コンピュータやネットワークによって構築された仮想的に作られた空間
・インターネット:複数のコンピュータネットワークを相互接続した、地球規模の情報通信網のこと。ネットとも呼ばれる
・サイバーセキュリティ:インターネットやコンピュータを安心して使い続けられるように対策をすること
・SNS:Social Networking Service 登録した利用者だけが参加できるインターネットのWebサイトのこと
・リスク:自然現象や人の行為が、生命、財産、生存環境などに損害を与える恐れがあること
・メディア:人が人に情報を伝るための電話や手紙、新聞、テレビ、映画、インターネット、電子メール、Webサイトなどのこと
・IT: information technologyの略。インターネットなどの通信とコンピュータとを駆使する情報技術
・リテラシー:ある特定の分野に関する知識や理解能力のこと。ITリテラシー、社会的リテラシーなどに使われる
・Zoom:パソコンやスマホなどを使用して、オンラインでセミナーや会議を開催するために開発された電子会議ソフト
・バイトテロ:従業員が不適切な行為をスマホなどで撮影し動画共有サイトなどへ投稿した結果、社会的な批判を招く行為
・ツイッター:原語はTwitter。世界での利用者数が3億人を超える匿名で登録できるSNS
・バカッター:迷惑な行為をする自分のバカな様子を撮影し、それを自らツイッターなどに投稿してしまう軽率な人物のこと
・デジタルタトゥー:ネット上に書き込まれたコメントや画像などが半永久的にインターネット上に残されることを意味する
・ペアレンタルコントロール:Parental control スマホやパソコンなど利用するIT機器を保護者が見守り管理するための方法や機能
・ファミコン:正式名は「ファミリーコンピュータ」。1983年に任天堂が発売した家庭用ゲーム機
・フィルタリング:未成年者が成人サイトや有害情報サイトを閲覧できなくする技術
・YOUTUBE:インターネット上に個人が自由に動画をアップして共有するサービス
・コンピュータウイルス:コンピュータに勝手に入り込んで、意図的に何らかの被害を及ぼすように作られたプログラムのこと
・詐欺メール:興味を惹く言葉を使い人をだまして金を窃取する詐欺が目的のメール
・フィッシングメール:実在の銀行やクレジットカード会社、ショッピングサイトなどとそっくりの偽のサイトに誘導するメール
・ランサムウエア:ファイルを暗号化して利用出来ないようにし解読と引き換えに身代金を要求するコンピュータウイルス
・IDパスワード:本人を識別するための文字列(ID)と他人に使われないように決められた鍵(パスワード)
・ワンストップ:1か所でさまざまな用事が足りる何でも揃うサービス
・フォロワー数:インターネットのブログやSNSの発信が何人に届くかの人数
・パーソナルファイアウォール:不正アクセスやウイルス感染などの試みを検知して遮断するPCに内蔵されたソフトウエア

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