▶六浦大道やぐら群:鎌倉時代の武士の墓
大道には貴重なやぐら群が残っています。やぐらは鎌倉時代の武士のお墓で、鎌倉、逗子にはたくさん残っています。逗子のまんだら堂やぐら群は壮観です。大道から朝比奈峠を越えるとすぐに鎌倉です。大道は鎌倉の文化の影響をかなり受けています。(総務部 廣瀬)
瀬戸橋から朝夷奈切通を経て鎌倉に抜ける鎌倉道の一つ六浦道の周辺には、数多くのやぐらが存在しています。六浦大道やぐら群もその中の一つです。六浦道の北側、侍従川に面した南向きの崖面につくられています。やぐらは、鎌倉を中心としてその周辺部に多く分布する中世の独特の墳墓で、横浜市域では金沢をはじめ、鎌倉の周辺域である栄区、港南区などに所在しています。
この地域によくみられる野島層の凝灰岩質の露頭面に横穴をあけ、羨門(せんもん)とよばれる入り口部分と遺骸を納める玄室(げんしつ)とで部屋状の墓所としています。遺骸を葬り、墓石や塔婆にあたる五輪塔(ごりんとう)や宝篋印塔(ほうきょういんとう)や板碑(いたび)等をおさめたり、なかには、仏教で使われている梵字等のレリーフなどで玄室内が飾られたものもあります。
このやぐら群は、急傾斜地崩壊対策事業に伴い、平成6、7年度に発概調査がおこなわれました。調査の結果、総数で15基のやぐらが確認され、内部や周辺からは、多量の五輪塔、宝篋印塔などの石塔や板碑あるいは、かわらけと呼ばれる土器などとともに多量の人骨も出土しています。この他、4ヶ所の石切りの遺構ややぐらを転用した後世の遺構なども発見されています。
このうち、今回、保存された9号やぐらは、調査の中で最も大型のやぐらで開口部で幅3.6m×高さ2.84m、遺骸を納める玄室は幅3.01m×奥行2.94mの規模を測るもので、奥壁寄りの床面中央には、97cm×85cm、深さ6cmの円形の納骨穴、奥壁には、幅56cm×高さ60cm×奥行21cmの龕(がん)とよばれる小さい横穴の埋納施設がつくられています。(横浜市教育委員会 文化財課 1997(平成9)年3月)